ゲイ映画 『 安非他命/アンフェタミン 』考(パクリ?)…日本に優れたゲイ映画が少ない理由

香港のゲイ映画『安非他命』(監督:雲翔、2010年制作)は、適度にエロティック、そして芸術性が高い優れたゲイ映画だ。ベルリン国際映画祭で絶賛され、日本でも2010年の「第5回関西クィア映画祭」で公開されている。主人公で恋人同士でもある2人のゲイが描かれ、哀しくも、ほろ苦くもあり、胸にチクチクとくるものがある。

日本のゲイ映画には、ここまでクウォリティが高いものは、そう多くない(勿論、香港でも決して決して多くないが……)。日本でこれに匹敵するのは、今泉浩一監督の『憚り天使』(Angel in the Toilet,1999年)、『NAUGHTY BOYS』、ベルリン国際映画祭にも招待された『初戀 Hatsu-Koi』などの一連の作品と、
橋口亮輔監督の『二十才の微熱』(1993年)、『渚のシンドバッド』(直ぐ下の画像)くらいではなかろうか。映画ではないが、日本テレビ系『同窓会』もかなりの完成度のゲイドラマだ。因みに、渚のシンドバッドは、ロッテルダム国際映画祭でグランプリを受賞している。ただこれらの作品は、女性との関係性を描いたものが多く、ゲイそのものを描いたと言うものは少ない。 ↙(左下向き矢印)に続く




日本にゲイ映画が少ないのはAVのせい?

↘日本に本格的なゲイ映画が少ない理由は、ゲイ・ポルノの自由があるからだと見ている。1982年から東梅田日活(ENK)系作品のような、ストーリー性のあるゲイ・ロマンポルノが登場し、同時にその頃からゲイAVが作られた。そちらにゲイの関心や創作のエネルギーが向かい、芸術性が高い本格的ゲイ映画は中々作られないのではなかろうか。

アジア圏では、タイやフィリピンを除き、まだまだポルノが禁止されている国が少なくない。ゲイ・ポルノとなれば尚更タブー視が強いのだ。ゆえに性表現を抑制した、素晴らしいゲイ映画に創作のエネルギーが向かうのかも知れない。

『安非他命』は、『憚り天使』のパクリ?

ただ『 安非他命/アンフェタミン 』は、今泉監督の『憚り天使』と似たシーンがある。天使の羽根をつけた裸の男性が登場するシーンなどがそうだが、これって「パクリ?」と思えてしまう。(↓に画像比較あり)。

もう一つ、台湾出身のアン・リー監督のゲイ映画『ブロークバック・マウンテン』に出て来る、崖から川に飛び込むシーンも某有名米国映画のシーンと酷似している。これもパクリだろと思わず思ってしまった。

因みに、日本には、比留間久夫の『YES・YES・YES』というゲイ小説がある。この作品が映画化されたらとても素晴らしい、世界的レベルのゲイ映画になると思うのだが……。この作品が映画やドラマにもならず、埋もれたままなのは残念でならない。


↓『安非他命』(香港、監督:雲翔、2010年制作)

『憚り天使』(日本、監督:今泉浩一、1999年制作)